カンガルーの小部屋

 カテゴリー 一覧

  • 2015.11.03

    カンガルーの本棚 そして歩きはじめる

    81yxNjXrDbL[1]

    宮下奈都さんの「よろこびの歌」(実業之日本社文庫)を読みました

    主人公の玲は、高校2年生。

    志望校に落ち、どうにでもなれという気持ちで通い始めた女子高校

    同級生となじまず、なじもうとせず、余生を過ごそうとします。

    合唱コンクールが、音楽を目指していた彼女の背中を押します。

    なにのために歌うのか、誰のために歌うのか。

    それは、未来のわたしに聞かせるため。

    挫折を味わった少女が、未来への一歩を踏み出す瞬間を描きます。

    高校時代から、ずいぶんと無駄な歩みを積み重ねてきた私の背中を

    優しく後押ししてくれる小説です。

                2015年11月3日

                いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.10.29

    カンガルーの本棚 勇気が出るレシピ

    71T1yvJBsbL[1]

    井吹有喜さんの「四十九日のレシピ」(ポプラ文庫)を、読みました。

    妻を亡くした夫、母を亡くした娘。

    訪れる失意と虚脱の日々に、残された手紙を見つけます。

    「四十九日には、明るく盛大に送ってほしい」

    妻が、そして母が望んでいたこと。

    突然現れたヤンキー娘と、準備が始まります。

    「あしあとの記」を作る中で、空白の白さが目立ちます。

    やがて、物語は・・

    家族の再生を願う、心温まる1冊です。

              2015年10月29日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.10.28

    カンガルーの本棚 それぞれの青春

    5185vUZ7T9L._SX230_[1]

    椰月美智子さんの「恋愛小説」を、読みました。

    20代の男女が織りなす恋愛模様。

    笑いころげ、泣きはらし、裏切り、裏切られ、

    優しく、身勝手で、おとなになり 思い返すときに、

    それは「狂気の恋」そして、「ぎりぎりの恋」

    身近に過ごせば、迷惑な主人公たちが、憎めなく

    いつまでも心のなかを、駆け巡ります。

             2015年10月28日

             いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.10.25

    カンガルーの本棚 レッツ・ビギン

    51kRCLSpOQL[1]

    重松清さんお「空より高く」(中公文庫)を、読みました。

    廃校予定の高校に通う3年生。

    先生の口から出る言葉は、「最後の・・」という枕詞

    閉ざされた未来にとまどう彼らが、少しずつ目ざめます。

    レッツ・ビギン

    若い人たちだけではなく、

    我々世代のお尻をも軽やかに後押ししてくれる1冊です。

                2015年10月25日

                いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.10.18

    カンガルーの本棚 揺れ動くこころ

    61xYObzkNjL[1]

    湯本香樹実さんの「春のオルガン」(新潮文庫)を、読みました。

    小学校を卒業したばかりの12歳のトモミは、

    祖母の死や隣家とのトラブルに、こころを傷めます。

    わからないこと、理解できないこと、

    どうしようもないことの前で

    トモミは、立ちすくみます。

    湯本さんのあとがき、

    角田光代さんの解説がとてもいい。

    おとなへと旅立つ少女の勇気を教えてくれる1冊です。

               2015年10月18日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.10.14

    カンガルーの本棚 しあわせのお手伝い

    51x4FyuyvKL[1]

    宮下奈都さんの「メロディ・フェア」を、読みました。

    化粧品会社のビューティーパートナーに就職した結乃は、売り上げは伸びず、

    どの商品を勧めればよいのか、迷うことばかりの新人さん

    そんな彼女に転機が訪れます。

    メイクで、人をハッピーに変える

    ほんの少しのお手伝いが、結乃をワクワクさせ、成長させていきます。

    映画「小さな恋のメロディー」に使われた、

    ビージーズの名曲「メロディ・フェア」を聞きながら、

    お化粧とは縁遠いわたしも、こころはすっかりメイクアップです。

               2015年10月14日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.10.04

    カンガルーの本棚 この道のむこうに

    71HlmYmh1rL[1]

    三浦しをんさんの「仏果を得ず」を、読みました。

    文楽の道を究めようとする青年

    とりまく師匠、相方、恋人

    話は笑いのうちにすすみ、半分徹夜で読み切ります。

    大切なものの順位、

    青年は、文楽、彼女

    恋人は、子ども、仕事、彼

    この頃よく大切なものの順位を考えます。

    あなたなら、どのように大切なものの順位をつけますか

                2015年10月4日

                いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.27

    カンガルーの本棚 電車に乗って

    51VGr6y-u6L[1]

    有川浩さんの「阪急電車」を、読みました。

    阪急今津線を舞台にした、各駅小説

    宝塚から西宮北口までと、折り返してまた宝塚に

    人と人との出会いがとても楽しく、

    グーグルの地図を開きながら、街並みを想像します。

    人の矜持がさりげなく描かれ、

    お気に入りの一冊BOXに入れることにしました。

                 2015年9月27日

                 いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.24

    カンガルーの本棚 新しいことば

    416jFHK4KlL[1]

    宮下奈都さんの「窓の向こうのガーシュウィン」を、読みました。

    体が弱く、誰とのかかわりも持てないままひっそりと暮らす19歳の少女。

    介護ヘルパー先の老人と、額装を仕事にする男性との出会いの中で、

    彼女の中の何かが変わり始めます。

    ありがとう、ごめんなさい

    おはよう、ただいま

    日常の言葉が、はじめて生まれたかのように、少女の胸の中で踊り始めます。

    不思議な、温かな成長の物語です。

               2015年9月24日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.17

    カンガルーの本棚 母の強さ母の弱さ

    51cHBYyd12L[1]

    椰月美智子さんの「かっこうの親、もずの子ども」を、読みました。

    不妊治療の末に授かった命

    子どもの病気やけんかなど、仕事と育児の中で起きる様々な葛藤

    迷い揺れ動く心と、愛する息子の日ごとの成長を見守る中で深まる愛情

    女性の目でしか捉えることができない細やかな子どもの描写に

    守ろうとする母の強さと、

    失いたくないという母の弱さが伝わります。

    読み終えて、すぐに周りの人にお勧めしたくなる1冊です。

              2015年9月17日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.15

    カンガルーの本棚 めぐりあえる幸せ

    61nUYNp1ugL[1]

    椰月美智子さんの「しずかな日々」(講談社文庫)を、読みました。

    5年生になった男の子の、ひと夏のお話。

    ホースでかける水の冷たさや、

    お塩をふりかけてほおばるスイカの甘さ

    最終ページに書かれた

    「人生は劇的ではない。ぼくはこれからも生きていく」

    この1行が、こころに残ります。

    今年の100冊目も、大当たりの1冊になりました。

              2015年9月15日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.09

    カンガルーの本棚 生きづらさを抱えながら

    51BhmrZdmEL[1]

    穂高明さんの「かなりや」(ポプラ文庫)を、読みました。

    虐待を受けていた女子高校生、パワハラで苦しむ青年

    パニック障害で動けなくなる女性、

    そして、忙しい日々の中に、こころをすり減らしていく医師

    生きづらさを抱えた人を、

    お寺の住職の家族が、やさしく支えていきます。

    今年99冊目になる本は、いつまでも記憶に残りそうな1冊です。

               2015年9月9日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.07

    カンガルーの本棚 てこじいと一緒

    418L5qlH1rL[1]

    湯本香樹実さんの「西日の町」(文春文庫)を、読みました。

    10才の少年と母が暮らすアパートに、

    「てこじい」が、転がり込んできます。

    何も言わず、いつも壁に寄りかかり一日を過ごす「てこじい」

    母の気がおかしくなりかけたとき、

    「てこじい」は、バケツ一杯の赤貝を 海から採ってきます。

    大人になった少年は、

    その貝殻を見るたびに、西日さすアパートを思い出します。

    祖父と、母と、少年との、大切な時間を思い出します。

             2015年9月7日

             いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.05

    カンガルーの本棚 となりの他人

    81jmAeSi6jL[1]

    穂高明さんの「これからの誕生日」(双葉文庫)を、読みました。

    バス事故で友だちを失い、ひとり生き残った千春を襲う罪悪感。

    探そうとして見つけられない 生きていく意味

    そんな千春の心を、まわりの人の目を通して描きます。

    藤田香織さんが解説の中で書かれているように、

    「相手の立場になって物事を考える」難しさを、

    この小説は、それでも温かく伝えてくれます。

              2015年9月5日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.02

    カンガルーの本棚 向こうへの手紙

    91IRTJyVgFL[1]

    湯本香樹実さんの「ポプラの秋」(新潮文庫)を、読みました。

    大きなポプラの樹に誘われて、母とふたりで暮らし始めたアパート。

    小学生の千秋は、不思議なおばあさんに出合います。

    おばあさんと交わした ふたりの秘密とは・・・

    あたたかな、そして明日に踏み出す

    静かな1歩へとつながる物語です。

              2015年9月2日

              いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.09.01

    カンガルーの本棚 スタンド・バイ・ジー

    71wPyMhw4-L[1]

    湯本香樹実さんの「夏の庭」を、読みました。

    いつも戸が閉まり、夏というのに一日こたつに座って過ごす

    一人暮らしのおじいさん

    ぼくは、友だちと3人で、おじいさんを見張ることにします。

    やがて、3人とおじいさんの間に生まれる友情

    夏が過ぎ、庭にコスモスが咲くころ、

    少年たちは 大人へと歩き始めます。

    日本児童文学者協会新人賞 受賞作品です。

                   2015年9月1日

                 いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.24

    ンガルーの本棚 月明かりの下を

    51Q2+ikGGpL._SX348_BO1,204,203,200_[1]

    穂高明さんの「月のうた」を、読みました。

    母を亡くした家族の再生の物語。

    娘、継母、母の友人、そして夫と、

    語り手を代えながら、それぞれの思いが描かれます。

    4つに分かれた章のタイトルは、

    「星月夜」「アフアの花祭り」「月の裏側で」「真昼の月」

    おすすめの本が、ひとつ増えました。

               2015年8月24日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.21

    カンガルーの本棚 生と死の揺らめき

    515cfAy84ML[1]

    湯本香樹実さんの「岸辺の旅」(文春文庫)を、読みました。

    3年前に失踪した 夫が帰ってくる。

    夫に誘われるまま、見知らぬ旅をする日々。

    旅を続ける中で、生と死の境界が揺らめいていく

    ゆるやかな文体に引き込まれ、わたしも岸辺の旅人となります。

    不思議な、ふしぎな、こころ休まる小説です。

                 2015年8月21日

                 いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.17

    カンガルーの本棚 作り直し

    51ZPjcGiB9L._SX342_BO1,204,203,200_[1]

    羽田圭介さんの「スクラップ・アンド・ビルド」(文芸春秋九月特別号)

    を、読みました。

    30歳になろうとする無職の青年と、祖父との物語。

    心と体を鍛えることにより再生していく青年と、

    それが叶わない老人と・・

    介護とは何か、年老いてなお望むものは何か

    作り上げては壊していく

    人生の哀しみが描かれます。

    青年の、真直ぐではないが優しい気持ちに触れることができる1冊です。

                  2015年8月17日

                  いたやどクリニック 木村彰宏

     

  • 2015.08.14

    カンガルーの本棚 話題の一冊

    51ZPjcGiB9L._SX342_BO1,204,203,200_[1]

    又吉直樹さんの「火花」(文芸春秋九月特別号)を、読みました。

    どうすれば世間に受け入れてもらえるのか

    努力と結果の乖離の中で、もがき悩む若手芸人たち。

    コンビを解散する最後のステージで、

    逆説的な表現で心情を吐露する場面に心打たれました。

    読み終えたあと、ほろ寂しさが残ります。

               2015年8月14日

               いたやどクリニック 木村彰宏

     

24/35