カンガルーの小部屋

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  • 2024.01.22

    カンガルーの本棚 ごはんが結ぶご縁

    小野寺史宜さんの「とにもかくにもごはん」(講談社文庫)を読みました。

    夫の突然の死をきっかけに、

    「クロード子ども食堂」を開いた波子さん

    食堂を訪れる小学生、中学生、そしてお年寄り

    手伝いは、大学生や主婦の面々

    食べるひとも、作る人も、それぞれに事情を抱え

    ごはんをご縁に、ぶつかりあり、つながりあいます。

    おいしくよろこぶ顔がある限り、ありがとうをうけとる笑顔がある限り、

    「クロード子ども食堂」は、今日もみんなを待っています。

    2023年1月22日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.01.17

    カンガルーの本棚 風呂敷を首に巻いたネコ

    重松清さんの「さすらい猫ノアの伝説」(講談社文庫)を読みました。

    風呂敷を首に巻いた黒猫「ノア」のさすらいの物語。

    ひとつ目は、新人の先生を守ろうとする子どもたちのお話し

    二つ目は、天候を繰り返す少女の、出会いと別れのお話しです。

    「忘れものはなんですか。大切なものはなんですか」

    風呂敷に入っていた、紙が問いかける謎

    その謎を問い続けることで、子どもたちは少し大人に育っていきます。

    いつまでも心に残る、重松清さんの作品です。

    2023年1月17日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.01.14

    かんがるうの本棚 悲しみのむこうに

    小川糸さんの「さよなら、私」(幻冬舎文庫)を、読みました。

    収められている短い3つのお話しのひとつめは

    友人を亡くした女性が、職を捨てモンゴルへと旅立ち受け入れたものは、

    ふたつめは、自分を捨てた母への恨みをひきずる女性が、

    異国の地の森で、見つけたものは、

    みっつめは、幼子を亡くした母が取った行動は

    悲しみの私にさよならをして、生きていこうとする

    3つのお話しのどれもが、心の奥底の糸を揺さぶります。

    大切にしたい作品の一つに入れることにしました。

    2023年1月14日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.01.10

    カンガルーの本棚 重く悲しい物語

    小川糸さんの「とわの庭」(新潮文庫)を読みました。

    主人公「とわ」は、目が見えません。

    音と、においと、肌で、この世の中を受け止めていきます。

    母とふたりの生活に終止符が打たれた後、

    孤独と、飢えと戦う日々が始まります。

    勇気を振り絞って、歩き始めたいっぽ、にほ、さんぼ

    盲導犬との出会い、ご近所さんとのふれあいのなかで、

    「とわ」は、いきているすごさに気づきます。

    物語の中とはいえ、「とわ」のつらさを受け止めるには、

    読み続ける勇気が必要です。

    この世の中から、悲しい思いをする子どもが、ひとりでもなくなりますように。

    2024年1月10日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2024.01.04

    カンガルーの本棚 耽美な世界に

    乙川優三郎さんの「麗しき果実」(徳間文庫)を読みました。

    時は江戸後期の文政年間

    宍道湖近くで生まれた主人公「理野」が、

    兄とともに、江戸へ蒔絵修行に出かけるところから始まります。

    原羊遊斎、酒井抱一、中山胡民、鈴木其一など、

    著名な人々との出合いが、理野を育て悩ませます。

    芸術の奥義に挑もうとする主人公の心意気が、胸に迫ります。

    蒔絵や日本画の、専門用語に囲まれて、

    理解が追い付かずに、ページをめくる手がとまり

    読み上げるのに、1週間という時間と、想像力を要した作品です。

    2024年1月4日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.12.31

    カンガルーの本棚 今年出会った本の世界

    2023年おおみそかの日

    積んでいた本に手を伸ばし、大晦日に2冊読了しました。

    それでも2023年に読み終えたのは新書24冊、小説74冊の合わせて98冊

    目標の100冊には届きません。

    お世話になった作家さんは、

    南杏子さん、西條奈加さん、重松清さん、青山美智子さん、凪良ゆうさん

    小野寺文宣さん、原田マハさん、寺地はるなさん、町田そのこさん、

    高田郁さん、坂本司さん、朝井まかてさん、小川糸さん

    心に残った書籍は、

    新書部門では、心の病の脳科学

    文庫部門では、52ヘルツのクジラたち、大人は泣かないと思っていた、

    ぎょらん、ライオンのおやつ

    今年も、新しい世界に出会うことができました。

    ありがとうございました。

    2023年12月31日

    いたやどクリニック 木村彰宏

  • 2023.12.23

    カンガルーの本棚 ありがとうのひとことで

    南杏子さんの「ディア・ペイシェント」(幻冬舎文庫)を読みました。

    大学病院を辞めて、市中の総合病院に勤めだした主人公の女性医師

    多忙な診療と、週一で回ってくる当直と

    身も心も疲れ果て、さらに現れたのがモンスター・ペイシェント

    先輩医師に励まされながら、乗り切ろうとするのですが・・

    医師も、看護師も、事務職も

    医療機関で働く人の現実をリアルに描いています。

    救いは、患者さんから届けられる「ありがとう」のひとこと

    現役の医師作家ならではの小説です。

    2023年12月23日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.12.05

    カンガルーの本棚 笑顔の奥底に

    南杏子さんの「ヴァイタル・サイン」(小学館文庫)を、読みました。

    主人公は、都内の病院で働く中堅ナース

    認知症の患者さん、ガン末期の患者さんの看護をしながら、

    仕事と母の介護に追われ、幾度となく絶望に襲われます。

    研修会で聴いた「感情労働」という言葉、

    気持ちはあっても、尽くせない自分

    過酷なナースの世界に、胸がふさがります。

    クリニックに働きながら、何も知らない自分が恥ずかしくなります。

    患者さんも、そこで働く人も、みんなが笑顔で過ごせるようにと考えます。

    2023年12月5日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.12.03

    カンガルーの本棚 また一つ巡り合い

    小川糸さんの「ライオンのおやつ」(ポプラ文庫)を読みました。

    雫は、若くして不治の病を得ます。

    人生最後の時を、瀬戸内の小さな島のホスピスで暮らそうとしますが、

    生への執着が、波のように寄せては引き、翻弄される毎日です。

    ホスピスで出会ったナース、そして同じ境遇に身を置くゲストたち

    手作りの食事をとり、丘から瀬戸内の海を眺めながら、

    自分の短い人生も、まんざらではないなと振り返ります。

    読後も、いろいろな思いが残る小説です。

    2023年12月3日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.12.01

    カンガルーの本棚 うつの難しさ

    斎藤環先生の「社会的うつ病の治し方」を、読みました。

    うつは、成人だけでなく思秋期や小児期にも広がり、大きな社会問題となっています。

    環先生は、本人のうつへのかかわり方、家族のかかわり方

    そして「人薬ひとぐすり」と呼ばれる、適切な第三者のかかわりが

    うつを和らげる道ではないかと述べられます。

    かろやかな文体に込められた、深い思い

    わたしの血肉となる1冊でした。

    2023年12月1日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.26

    カンガルーの本棚 会ってみたいけれど

    荻原浩さんの「逢魔が時に会いましょう」(集英社文庫)を読みました。

    民俗学者の手助けのバイトを始めた女子大生。

    フィールドワークで出会うのは、座敷童や河童や天狗さん

    軽妙なかたりくちと、民俗学のうんちくに、

    思わず頬を緩めます。

    でも、やっぱり不思議生物には、会いたくないけどなあ

    2023年11月26日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.24

    カンガルーの本棚 傾城の人

    朝井まかてさんの「落花狼藉」(双葉文庫)を読みました。

    大江戸は、傾城の町「吉原」が形を成していくとき

    きらびやかな町並みの裏で、非難の声を一身にあび、

    お上から代替えにと沼地を与えられ、また幾度となく大火事にみまわれる中、

    それでも吉原を守ろうとする女将の物語。

    「亡八」と呼ばれようとも、懸命に生きようとする姿に、心を動かされます。

    2023年11月24日

    いたやどクリニック 木村彰宏

  • 2023.11.23

    カンガルーの本棚 それぞれの居場所

    朝井まかてさんの「残り者」(双葉文庫)を読みました。

    時は慶応4年、江戸城の無血開城その前夜に、大奥に潜んでいた5人の女性

    縫い物師、料理番,お中臈、それぞれが大奥に潜んでいたわけは

    時は流れ、明治になり再開した5人が過ごした日々

    戦争は、それぞれの居場所や生活を奪い

    今もなお、悲しみを広げています。

    大奥を舞台にした、女たちの物語です。

    2023年11月23日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.21

    カンガルーの本棚 藍と愛

    西條奈加さんの「四色の藍」(PHP文芸文庫)を読みました。

    夫を殺された下手人を追う主人公「環」

    見眼麗しい剣士と、訳ありの色っぽい女、そして洗濯ばあさんとともに、

    下手人を追う毎日、

    次々と明らかになる人間関係

    そして、藍にまつわる愛の物語。

    途中で結末が読める展開でしたが、面白く読み終えることができました。

    2023年11月21日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.17

    カンガルーの本棚 ピリリとからい

    米澤穂信さんの「満願」(新潮文庫)を、読みました。

    夜警、死人宿、万灯、関守など、6編のショートミステリーが詰まっています。

    小さな出来事のうらに、人間の本質が見えてきます。

    「このミステリーがすごい!」「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」の3冠に輝く作品。

    かんがるうっ子の本棚から、拝借して読み始めた1冊です。

    2023年11月17日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.13

    カンガルーの本棚 そのままでいろ

    西條奈加さんの「六花落落」(祥伝社文庫)を読みました。

    古賀藩の下級役人の主人公のあだ名は「何故なに なおしち」

    雪の日に降る雪をともに眺めた藩の重臣との出会いが、

    主人公を蘭学への道へと誘う込みます。

    時代は幕末へと大きく変わりつつあるとき、

    学問一筋に生きていた主人公にかけられた言葉は、「そのままでいろ」

    学問と政治とのはざまで揺れ動く生き様を描いた、深い作品です。

    2023年11月13日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.10

    カンガルーの本棚 こころのケアも

    坂木司さんの「シンデレラ・ティーズ」(光文社文庫)を読みました。

    歯医者さんがとても怖くて嫌いな女子大生サキ

    夏休みのバイトにと紹介されて出かけたのが、叔父が務める歯科クリニック

    受付係を手伝うことになり、聞こえてくるのはキィーンという身も心も凍り付くあの音

    クリニックを訪れる訳ありの患者さんの生活の背景を知るごとに、

    歯の治療だけではなく、こころのケアの大切に気づいていきます。

    お仕事小説と、ちょっとしたミステリーと、楽しめる1冊です。

    2023年11月10日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.07

    カンガルーの本棚 何かを伝え残して

    村瀬健さんの「西由比ケ浜駅の神様」(メディアワークス文庫)を読みました。

    真夜中の駅を、脱線事故で大勢に人が亡くなった列車が通るという。

    噂話を耳にした、婚約者を亡くした女性や

    乳に不義理を重ねていた息子、

    孤立していた時に優しくされた女性に想いを続ける青年

    そして、事故を起こした列車の運転手の妻

    真夜中の幽霊列車に乗り込み、愛しい人に何を伝え、何を伝え残されたのか

    深夜の線路を、列車は通りすぎていきます。

    いたやど駅前の「井戸書店」の森店長さん、一推しの作品です。

    2023年11月7日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.04

    カンガルーの本棚 江戸の介護人

    朝井まかてさんの「銀の猫」(文春文庫)を、読みました。

    主人公は、分かれた婚家に残された借財を返すため

    介護人を務める「お咲」

    武家屋敷や大店の離れにするお年寄り

    食事や排せつ、入浴など、自分のことが自分でできなくなって

    そこで「お咲」の出番です。

    急がず寄り添い、かたくなな心をゆっくりと時ほぐしていきます。

    今に通じる江戸時代の物語です。

    2023年11月4日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

  • 2023.11.01

    カンガルーの本棚 希望を胸に

    西條奈加さんの「千年鬼」(徳間文庫)を読みました。

    1000年を超える小鬼と少女との物語。

    人の胸の中に巣くうという「鬼の芽」は、育つとその人を鬼に変えるという

    時を超え、人の姿を超えて、小鬼は少女の「鬼の芽」を摘み取ろうとします。

    その果てに待っていたのは、絶望の中にもかすかに見える希望の光です。

    弱きものによりそう作者の心が伝わります。

    2023年11月1日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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