カンガルーの小部屋

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  • 2023.07.18

    カンガルーの本棚 近くて少し遠い

    辻村深月さんの「家族シアター」(講談社文庫)を読みました。

    家族にまつわる、7つの短いお話。

    近くて、それでいて少し遠い

    そんな家族の関係を、描きます。

    姉と妹、姉と弟、母と娘、父と息子、姉と妹、祖父と孫、そして父と子の物語

    なかでも「タイムカプセルの秋空」「孫と誕生会」は大好きな作品です。

    通勤電車のなかで、深く胸に刺さりました。

    2023年7月18日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.07.12

    カンガルーの本棚 愛しい人との

    梶尾真治さんお「黄泉がえりagain」(新潮文庫)を読みました。

    前作に続いて、舞台は震災後の熊本。

    愛する人を亡くした人の目の前に、祖母が、妻が、恋人が再び現れます。

    「黄泉がえり人」の報告は次第に増えていき、

    熊本城を作ったという武将までが現れます。

    復活は何を意味するのか

    愛しい人との再会、そして残された日々を大切に思う気持ちが

    今を生きる私たちに、問いかけます。

    少し不思議なお話ですが、笑いもあり楽しめる1冊でした。

    2023年7月12日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.07.04

    カンガルーの本棚 京と東京の

    青山美智子さんの「月曜日の抹茶カフェ」(宝島文庫)を読みました。

    出会いは、東京のカフェ

    定休日にたまたま開けれていた抹茶イベントでの出会いが、

    物語の始まりです。

    生活に疲れた女性、妻との関係がうまくいかない男性

    ランジェリーショップから、温浴施設、紙芝居

    舞台は移り、登場する人も変わりながら、

    12の短い物語はつながり合い、そして

    短い言葉の中に、作者の思いがぎっしりと詰まり、

    明日への希望を見出していく。

    青山美智子さんの小説は、魔法のような言葉で彩られています。

    2023年7月4日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.07.02

    カンガルーの本棚 私の声がきこえてますか

    町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」(中公文庫)を読みました。

    クジラは広い海の中で、仲間たちとつながるために

    10ヘルツから39ヘルツの声で歌うという。

    その中で、52ヘルツという高い声で歌うクジラの声は、

    仲間たちには届かない。

    主人公キナコと、出会った少年や、アンさんも、

    仲間たちに届かない声で、叫び続けます。

    You tubeでクジラの鳴き声を聞きながら、

    1度目は2日間で、2度目は1日で再読しました。

    2021年本屋大賞第一位に輝く最高の1冊です。

    2023年7月2日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.30

    カンガルーの本棚 明るくて悲しくて

    荻原浩さんの「家族写真」(講談社文庫)を読みました。

    家族にまつわる、7つの短い物語

    軽やかなタッチの文章で、家族の数だけ家族を描きます。

    7つの中で好きな短編は、「しりとりの、り」

    家族でドライブに出かけた時に、

    会話のなさをどうにかしようと始めたしりとり

    短い単語から、やがてこころの奥の言葉が紡ぎだされていきます。

    こころが疲れた時にお勧めの1冊です。

    2023年6月30日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.27

    カンガルーの本棚 見ることができたなら

    寺地はるなさんの「水を縫う」(集英社文庫)を読みました。

    高校生の主人公の楽しみは、刺繍をすること。

    母には、彼の趣味がうれしくありません。

    結婚を控えた姉のドレスを、彼が作るというのですが。

    男のらしさ、女の子らしさという周囲の目の中で生きてきた

    主人公や姉、母、そして祖母の屈折した心のうち。

    流れる水のように前を向いて生きていく

    作者の応援歌が聞こえてきます。

    2023年6月27日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.24

    カンガルーの本棚 あらためてスマホ

    榊浩平先生の「スマホはどこまで脳を壊すのか」(朝日新聞新書)を読みました。

    人々の暮らしを便利にし、生活を一変させたスマホ

    便利さの影に、深刻な問題が現れてきています。

    スマホの利用時間と成績との関係では、

    勉強時間を増やし、しっかりと眠っても

    スマホの利用時間が3時間を超えると、勉強の成果は全く現れない

    それどころか、認知機能に関係する大脳の前頭前野の発育が止まってしまう

    榊先生は、自らの研究に基づいて

    子どもの脳への深刻な影響を強調されます。

    オンライン授業やオンライン会議の限界にも言及され、

    現代人必読の1冊といえます。

    2023年6月24日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.21

    カンガルーの本棚 悩みのむこうに

    伊与原新さんの「八月の銀の雪」(新潮文庫)を読みました。

    悩みながら生きる5人の男女が出会う、人生の先輩たちとの物語

    就活がうまくいかず、自分を受け入れることができない大学生

    子育てにつかれ、自分を見失いつつあるシングルマザー

    立ち退かせ屋に務め、出会った老女とハト

    恋に破れ、明るくふるまうことで自分を支える女性

    仕事場でのミスかくしに耐え切れず、退職した中年男性

    それぞれが出会う先輩たちとの会話の中で、

    自分が帰る場所、自分が進む場所を見つけていきます。

    きびしい現実の中にも、小さな明かりが灯るあたたかな小説です。

    2023年6月21日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.18

    カンガルーの本棚 傷つく脳

    川島隆太先生の「スマホ依存が脳を傷つける」(宝島社新書)を読みました。

    便利さと引き換えに失ったもの

    脳の認知機能を奪い、脳の発育・発達すら損なっていく。

    スマホ依存は、ごく普通に起こり始め、子どもの未来を奪っていきます。

    脳活ソフトで有名な川島先生が、科学調査をもとに出された警告の書です。

    2023年6月18日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.15

    カンガルーの本棚 みんなの笑顔が

    山口慎太郎先生の「子育て支援の経済学」(日本評論社)を読みました。

    少子化対策として、子育て支援の方策と政策化が話題になっています。

    山口先生は、子育て支援を、給付金などの現金給付と、

    保育所の充実などの現物給付をわけ、

    数理学的な予測をもとに、

    出生率や、母親の就業率にあたえる効果を検証されます。

    経済学の専門用語には、なじめないのですが、

    各章のおわりに、分かりやすいまとめが書かれています。

    読み終えるのに、1週間かかりましたが、

    子育て支援を考える時に、貴重な知識をいただくことができました。

    感謝の一冊です。

    2023年6月15日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.13

    カンガルーの本棚 会話の楽しさ

    小野寺史宜さんの「タクジョ!」(実業之日本社文庫)を読みました。

    夏子が大学を出て働き始めたのは、タクシー会社

    タクジョの誕生です。

    お客さんとの出会いと会話、

    乗り逃げや、強盗もどきとも出会い、怖い思いをしながらも、

    タクジョという仕事をやめられません。

    別れた父を乗せて交わす会話

    まるでタクシーに乗っているかのように

    テンポの良い話の運びに、乗せられてしまいます。

    若者の前を向いて生きる姿に、フレーフレーと声を出して応援したくなる小説です。

    2023年6月13日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.06.10

    カンガルーの本棚 思い描いて

    西條奈加さんの「千両かざり」(新潮文庫)を読みました。

    水野忠邦の倹約令が、人々の暮らしを凍えさせた江戸時代

    細工師の家に生まれた女主人公は、

    時代の制約の中で、ひとり飾り修行を続けます。

    現れた、人を寄せ付けない職人の腕に惹かれ

    そして・・・

    飾り物の緻密な描写が心を打つのですが、

    その形を頭に思いえがく才がありません。

    読書するにも、才がいるのですね。

    2023年6月10日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.30

    カンガルーの本棚 なかなかな人生

    青山誠さんの「牧野富太郎」(角川文庫)を読みました。

    朝ドラの「らんまん」に惹かれて、手に取った1冊

    牧野博士の生涯を、伝記風にまとめた読み物です。

    造り酒屋の裕福な暮らしに飽き足らず、

    植物学を目指して東京へ、

    借財を重ね、重ねて作り上げた日本の植物学

    まわりの人々が支えたことの、賜物です。

    2023年5月30日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.21

    カンガルーの本棚 不思議なお話

    佐藤正午さんの「月の満ち欠け」(岩波文庫)を読みました。

    子どもを残すのではなく、

    何度も生まれ変わって思いを遂げる女性の物語。

    前世の記憶を受け継いで、大切な人に会いに行く

    でも、なぜか感情移入ができません。

    第157回直木賞受賞作です。

    2023年5月21日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.18

    カンガルーの本棚 できすぎ君

    原田マハさんの「旅屋おかえり・丘の上の賢人」(集英社文庫)を読みました。

    今回の旅の先は北海道、小樽と札幌

    依頼人から頼まれた旅で、出会う3名の人

    帰りたくても帰れない

    旅の成果物を届けるときに

    ふるさととは、「おかえり」って言ってくれる人が住む所だと気づきます。

    少しできすぎかなという、印象が残りました。

    2023年5月18日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.16

    カンガルーの本棚 わかってはいても

    小野寺文宜さんの「近いはずの人」(講談社文庫)を、読みました。

    急逝した妻が残した、携帯電話

    ロックをはずすと、最後に交わされた謎のメールが

    わかっていたつもりの妻にどんな秘密が隠されていたのか

    テンポいい文体に、ページをめくるスピードは速まるのですが、

    あまり好きになれない結末が待っていました

    2023年5月16日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.12

    カンガルーの本棚 命綱を握りしめて

    凪良ゆうさんの「流浪の月」(創元文芸文庫)を読みました。

    行き場を失った若い二人に残されていたのは、

    友情でもない、恋愛感情でもない

    お互いを支え合う、命綱

    世の中の人がどう言おうと、

    強く結ばれた掌に、お互いの命を感じ取る

    本屋大賞2021年の受賞作は、生きる難しさと救いとを

    わたしに語りかけます。

    2023年5月12日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.10

    カンガルーの本棚 それぞれの秘密

    凪良ゆうさんの「神様のビオトープ」(講談社タイガ)を読みました。

    事故で夫を亡くした主人公は、残された家で夫の幽霊と出会います。

    彼女にしか見えない姿、聞こえない声をたよりに、

    夫との二人の生活を続けます。

    そこに現れる、普通の人々に隠された秘密とは

    彼の最期の選択を探し続ける女子大生

    ロボットとの友情を取り戻そうとする小学生

    成熟を拒み続ける大学生

    美しさの中に、恋心を隠し続ける高校生

    それぞれが秘密を抱えながら暮らすことの普通さを、

    小説は教えてくれます。

    2023年5月10日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.05.08

    カンガルーの本棚 願いを託して

    東野圭吾さんの「くすのきの番人」(実業之日本社)を読みました。

    罪を犯した青年に待っていたのは、「くすのきの番人」というお仕事

    月の満ち欠けに合わせて訪れる願い人が、

    くすのきに何を託すのか

    青年にはその謎がわかりません。

    固く守られているくすのきの秘密

    やがて青年は、言葉では伝えきれない ひとの思いに気づきます。

    ふしぎな、ひとの情念を描いた作品です。

    2023年5月8日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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  • 2023.04.27

    カンガルーの本棚 悩める人々に

    凪良ゆうさんの「わたしの美しい庭」(ポプラ文庫)を読みました。

    古ぼけたマンションの屋上にある、手入れされた神社

    悩みを持ち訪れる人は、後を絶ちません。

    マンションに住む住民も訳あり人ばかりです。

    急死した彼の思い出を、何十年も引きずる女性

    両親から受け止めてもらうことができず、さまよう性的少数者

    うつ病から脱することができず、もがき苦しむ男性

    そんな彼女、彼に救いの日は来るのかな

    細やかな心理描写に、引き込まれてしまう小説です。

    2023年4月27日

    いたやどクリニック小児科 木村彰宏

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