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2023.03.14
カンガルーの本棚 父になる
重松清さんの「ひこばえ」(朝日文庫)を読みました。
主人公のもとに、幼い時に分かれた父の訃報が届きます。
顔も、一緒に生活した時の記憶も思い出せない父を、
受け入れることができずにいる主人公
やがて、父の最晩年を知る人とのつながりの中で、
息子として、父を知る旅が始まります。
題名に込められた「ひこばえ」の意味を
読み終えた後も 重く受け止め考えたくなる、おすすめの1冊です。
2023年3月14日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.24
カンガルーの本棚 せき越えて
西條奈加さんの「せき越えぬ」(新潮文庫)を読みました。
小田原藩が下級士族の武一は、
箱根の関の役人に任じられます。
「入鉄砲出女」の言葉にもあるように、
とりわけ女性の関越えには厳しい詮議が待ち受けています。
箱根の関で起きる様々な出来事
時代の大きな変化の中で、翻弄される武一
やがて、武一は友のために大きな決心をします。
読みやすく楽しめ、若者の心意気を後々まで心に残してくれる作品です。
2023年2月24日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.19
カンガルーの本棚 非常識の経済学
藤井聡さん、森井じゅんさん共著の
「消費税減税・ニッポン復活論」(ポプラ新書)を読みました。
税金をなぜ集めるのか
その年度の予算案の財源はどこから
消費税、社会保障費の増加が、実質賃金を引き下げ
人々の購買意欲を減らし、物は売れなくなり、
企業は人減らしと低賃金路線を突っ走る
その結果、購買意欲はますます冷え込み、物が売れなくなる。
この悪循環を打開するにはどうすればよいのか。
これまで常識だと思われてきた経済学に
まったく新しい観点から風穴を開けようとされる1冊です。
2023年2月19日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.17
カンガルーの本棚 町が呼ぶ声
小野寺史宜さんの「まち」(祥伝社文庫)を読みました。
高校を卒業し、尾瀬に近い故郷から東京に出てきた瞬一
身体を動かす仕事をしたいと始めた引っ越し屋の仕事
川沿いの道を走り、人と出会い、人を助け
そして、自分がめざしたい道がみえてきます。
大東京の中で、生きていこう
瞬一の決意に、街は大きく手を広げ、受け止めてくれます。
心が暖かくなる1冊です。
2023年2月17日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.14
カンガルーの本棚 永遠のパートナー
新堂冬樹さんの「虹の橋からきた犬」(集英社文庫)を読みました。
業界でのし上がるために、寸暇を惜しんで仕事に邁進する主人公。
社員を巻き込み、孤立し、酒におぼれ
そんな南野のもとに、子犬パステルが預けられます
南野を見つめるパステルのまっすぐな瞳に
栄光や賞賛や名誉のかわりに、もっと大切なものを知ります。
そして、病に侵されたパステルとの別れ
作者の体験をもとに書かれたこの作品は、
旅立った我が家の愛犬との日々を、なつかしく静かに思い出させてくれます。
2023年2月14日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.11
カンガルーの本棚 思いを新たに
南杏子先生の「ブラックウェルに憧れて」(光文社文庫)を読みました。
大学を退官する教授とその教え子で、女性医師として活躍する4人の同級生の物語
20年近くの時を経て、眼科医、健診医、エスコートドクター、新生児科医として生きる
彼女らの前に立ちふさがる、きびしい現実
悩み苦しみ、それでも患者さんのためにと、立ち上がる女性たちの姿に
身が引き締まる思いがします。
毎日をそれなりに過ごすことに満足しないで、
まだまだやりたいこと、やり残したことに挑んでみようという
勇気を与えてくれる1冊です。
このところ、いろいろな分野の新書に手を伸ばし、
知的好奇心が満たされていましたが
小説も、いいものですね。
2023年2月11日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.07
カンガルーの本棚 貧しい国に
小林美希さんの「年収443万円・安すぎる国の絶望的な生活」(講談社現代新書)
を読みました。
電気代、ガス代、生鮮食料品、みそ、しょうゆ
値上げのニュースを聞かない日はありません。
その国で暮らす人々は、ペットボトルのお茶を買わずに水筒を持参し、
ケーキや、スタバは高根の花
街には非正規社員があふれ、コロナ禍で失業者も増えています。
若者はその日の暮らしに忙しく、
結婚する資金もなく、子育てしようにも教育費が重くのしかかります。
小林先生は、生活者の生の声に耳を傾けられ
就職氷河期を過ごした、もはや若者とは言えない世代の声を書きとめられます。
胸が痛くなるような現実
その現実から目をそらすまいと、誓いを新たにさせる1冊です。
2023年2月7日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.02.03
カンガルーの本棚 複雑すぎて
島宗理先生の「使える行動分析学」(ちくま新書)を読みました。
行動分析学を用いて、自分の課題を明らかにし、それに介入して解決していく
精神論ではなく、行動の後に生じる随伴性をもとに整理する
ただ、実生活上の課題になると、いろいろな因子が絡み合い、
複雑になりすぎて、行動を起こす前にためらってしまいそうです。
まだまだ理解不足
もっと、消化する必要があると思いました。
2023年2月3日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.01.20
カンガルーの本棚 文明は進化しているのか
稲田豊史さんの「映画を早送りで観る人たち」(光文社新書)を読みました。
若者の間で、動画を倍速、あるいは10秒飛ばしで観る習慣が広がっている。
その背景にある若者が置かれている現状とは何か
作品をコンテンツと考え、鑑賞から消費へと行動が変化したこと
万人にわかりやすく伝えることが、求められる作品作り
可処分時間の減少とともに、「タイパ」を優先せざるを得ない生活
そして、そして
著者自らが、あとがきで述べられているように、
本書は「メディア論」であり、「コミュニケーション論」であり
また、「世代論」「創作論」「文化論」でもある。
幅広く、軽やかでいて奥深い論調に、記憶に残る1冊となりました。
2023年1月20日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.01.18
カンガルーの本棚 コロナ禍と少子化
河合雅司さんの「未来のドリル」(講談社現代新書)を読みました。
コロナ禍が、この国にもたらしたもの
それは日本社会の様々な面に見て取れる「この国の老化」
高齢者ファーストの背策で、若い人の青春を犠牲にした重さは、
婚姻率や出生数の減少という形で現れてきました。
河合先生は、国の宝である若い世代の輝きが
少しでも増すように後押しする必要性を訴えられます。
前に読んだ「未来の年表・業界大変化」とともに
この国の未来を考えさせられる1冊です。
2023年1月18日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.01.08
カンガルーの本棚 未婚率の増加こそ
山田昌弘先生の「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」(光文社新書)を読みました。
2022年日本の出生数が77万人台になったという、衝撃的なニュースが流れ、
政府も少子化対策に本腰を入れるという宣言を行いました。
生まれた子どもを育てやすくする世の中を作ることは、とても素晴らしいことですが、
山田先生は、若者が結婚しない、結婚できない世の中こそが、
少子化の第一原因であると述べられます。
若者が、なぜ結婚しないのか、できないのか
教えられることが多い1冊でした。
2023年1月8日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2023.01.05
カンガルーの本棚 明るい未来は来るのかな
河合雅司先生の「未来の年表・業界大変化」(講談社現代新書)を読みました。
2022年出生数の速報値が、77万人台になったという大きなニュースが飛び込んできました。
国立社会保障・人口問題研究所の予測より11年前倒しとなる減少です。
生まれた子どもたちが育ち20年後、
今の20才の若者に比べると40万人も少ない成人式を迎えることになります。
人口の減少は、社会に、また働く場にどのような変化をもたらすのか。
現実に直面しつつある今、どういう行動をとるべきなのか。
避けることができない重いテーマを、河合先生から突き付けられます。
2023年1月5日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2022.12.31
カンガルーの本棚 今年の一おしに
杉山尚子先生の「行動分析学入門」(集英社新書)を読みました。
行動分析学は、行動の原因を解明し、行動に関する法則をみいだそうとする科学
その言葉から始まり、好子、嫌子、強化、弱化、そして行動随伴性と
行動分析学ならではの世界へ、読者を導きます。
年末のあわただしい時期の読書となりましたが、
2022年、わたしに最も影響を与えてくれた1冊になりました。
来年も良書に巡り合うことができますように。
みなさまよいお年をお迎えください。
2022年12月31日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2022.12.30
カンガルーの本棚 若さとは
和田秀樹先生の「人は感情から老化する」(祥伝社新書)を読みました。
人の老化は、知力や体力よりも前に、感情から始まる。
意欲・自発性・好奇心といった感情が衰えると、外観も変化し、
また、知力や体力を保とうとする習慣も失われていく。
どうすれば老化を遅らせることができるのか
2006年に出版された本なので、今の時代には合わないとことが多いのですが
伝えようとされていることは、常識的な内容です。
今の時代に合ったやり方で、どう実践していくのか
読後に宿題が残りました。
2022年12月30日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2022.12.26
カンガルーの本棚 力をぬいて
本田秀夫先生の「しなくていいことを決めると、人生がラクになる」
(ダイヤモンド社)を読みました。
まじめな性格で、自分へのハードルを高く掲げ
超えられない課題を前に、自分のふがいなさに怒りを感じる
そんな生きづらさの中にいるあなたに、
するべきことよりも、楽しめること、
やりたいことを優先して取り組む生き方を伝授される本です。
2022年12月26日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2022.12.22
カンガルーの本棚 理解半分に達せず
奥田健次さんの「メリットの法則・行動分析学・実践編」(集英社新書)を読みました。
小児アレルギー学会でご講演を聞いた奥田先生の
手に取った3冊目のご著書
行動分析学について、少し専門的に解説されています。
人が行動し続けるとき、直後の結果が意味を持つという行動分析学
まだまだ理解できないところが多く、不思議な気持ちでいっぱいです。
もう少し理論を学び、手短なところから実践できればと思います。
まだまだこれから、大きな課題を見つけました。
2022年12月22日
いたやどクリニック小児科 木村彰宏
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2022.12.19
カンガルーの本棚 深く静かに
高橋和巳先生の「精神科医が教える聴く技術」(ちくま新書)を読みました。
傾聴 言葉をはさまず聴き続けることで苦しむ人を救う技術
先生は、人の悩みは①人が恐い、②自分を責める、③人とうまくつき合えない
④死ぬのが恐い の4つに大別されるとしたうえで
①黙って聴く、②賛成して聴く、③感情を聴く、④葛藤を聴く中で
人は変わっていくと教えられます。カウンセリングの極意に、少し触れることができたように思います。
この本に出合い、先生の書かれた著書を、すぐに手に取りたくなりました。
2022年12月19日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.12.16
カンガルーの本棚 菩薩の顔の影に
西條奈加さんの「鱗や繁盛記」(新潮文庫)を読みました。
長野の山奥から大江戸は上野に出てきた末(すえ)は、料理茶屋に奉公します。
むかしの輝きを失った店の若旦那は、みなから菩薩とよばれる優しい男です。
行儀を見習いながら、店を立て直そうとする末
そして、若旦那に隠された秘密とは
お料理小説とミステリーが合わさった、時代小説です。
2022年12月16日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.12.14
カンガルーの本棚 汽笛が聞こえる
高田郁さんの「駅の名は夜明・軌道春秋Ⅱ」(双葉文庫)を読みました。
鉄道にまつわる9つの小さな物語別れ話に悩む女性、連れ合いに先立たれ一人異国の地を旅する女性
車内でおきた出来事から老婆を守る人々
などなど、どのお話も心に深く染み入ります。
あなたなら、どのお話を一押しされますか。
2022年12月14日
いたやどクリニック 木村彰宏
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2022.12.11
カンガルーの本棚 ゆるやかにのびのびと
本田秀夫先生の「学校の中の発達障害」(SB新書)を読みました。
集団の中で生きづらさを感じている子どもたち
本田先生は、つらさをかかえている子どもたちに焦点を当てて、
学校とはなにか、
学力とはなにか
教育で大事なことはなにかと 問いかけられます。
300ページに近い大作ですが、
今の教育で変えてほしい、変わってほしいことが伝わってきます。
時間がかかるかもしれませんが、一読されることをお勧めします。
2022年12月11日
いたやどクリニック 木村彰宏